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こうぇえよぉ。。。 だが結局、俺はそのビルに向かうことになった。 CDも本も家具も、まったく金にならなかったからだ。 寿命を売るなんて話を信じたわけじゃない。 しかし、俺はこういう可能性を考えたんだよ。 爺さんや兄ちゃんが言っていたことは何かの比喩で、実はものすごく割のいいバイトがあるんじゃないかって。 寿命を縮めるようなリスクを負う代わりに、一か月で百万くらい稼げたりするとか、そういうの。 ところが、うす暗い階段を上がってドアを開け、目が合った店員らしき女が、俺の顔を見るなり 「時間ですか? 健康ですか? 寿命ですか?」 なんて言ってくるもんだから、笑っちゃうよな。 一連の出来事で神経がまいっていたのか、俺はもう考えるのが面倒になって、「寿命」と答えた。 「二時間ほどお時間をいただきます」と女は言い、すでに両手はPCのキーボードをかたかた叩いていた。 おいおい、人の価値って二時間程度で分かっちゃうのかよ?俺はあらためて店内を見回した。 なんていうんだろうな、眼鏡のない眼鏡屋、宝石のない宝石店みたいな空間とでもいうか。 でも俺の目に見えないだけで、本当はそこら中に寿命とか健康とか時間が飾ってあるのかもしれない。 なんてな。 いつまでこの笑えない冗談は続くんだ? 駅前の広場に行って、煙草に火を点け、最後の一本を時間をかけて味わった。 煙草もそろそろやめなきゃな、と思う。金食い虫だし、健康にもよくねえからな。 近くで鳩に餌をやっている老人がいたんだが、それで食欲が湧いてしまう自分が情けなかったな。 もうちょっとで鳩と一緒に地面をつっつくとこだったぞ。 寿命、高く売れるといいなあ、と思った。