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駅で時間を潰した後、俺は少し早めに店に戻り、ソファでうたた寝しながら査定結果が出るのを待った。 二十分ほどして、俺の名前が呼ばれた。 妙だよな。俺、一度も名乗った覚えはないんだよ。 査定結果を見て、俺は変な声をあげちまった。 一年につき一万円?余命三十年? ブックオフだってもう少しまともな値段をつけるぞ。 亀か何かの結果と取り違えたんじゃないのか? でも、そこには確かに俺の名前が書いてある。 「これ、何を基準に決められてるんですか?」 俺はそう言いつつ査定表を女店員に見せた。 「色々です」と彼女は面倒そうに答えた。 「幸福度とか、実現度とか、貢献度とか、色々」 多分、こういう質問に飽き飽きしているんだろうな。女店員はシステムの詳細を教えてくれた。 本当は教えちゃいけないらしいんだが、あんまりにも俺がしつこかったんだろうな。 特にショッキングだった情報は、一万円というのが、寿命一年あたりの最低買取価格だったってこと。 ようするに、俺の人生は限りなく無価値に近いってことだ。 幸せになれず、また誰一人幸せにできず、何一つ達成できず、何一つ得られないらしい。 「問題がなければ、こちらにサインをお願いします」 女店員がしびれを切らしたように言うが、これを見て問題がないって言うやつがいたら、そいつは脳の病院に行った方がいいと思うぜ。 だがその頃には俺の感覚は麻痺しちまっててさ、自分の物や時間を安売りするのに慣れ過ぎてた。 で、ヤケになって、こう答えちまったんだ。 「三か月だけ残して、あとは全部売ります」