コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
三十万入った封筒を持って、俺は店を出た。 引きつった感じの笑いがこみあげてきたな。 何が悲しいって、俺の寿命の安さの理由、俺自身、なんとなく分かる気がするんだよ。 だがそれについては考えたくなかったから、帰り道に酒屋によって大量にビールを買いこんで、俺はそれを飲みながら夜道をゆっくり歩いた。 酒なんて飲むのは本当に久しぶりだったね。だからすっかりアルコール耐性もなくなってて、俺は帰宅して二時間後には吐いてた。 余命三か月、最低のスタートを切ったわけだ。 眠りにつけたのは朝四時くらいだったなんだが、こういう日に限って、幸せな夢を見ちまうんだよな。 小学生の頃の夢だった。なんでもない夏休みの夢。 親の車で、幼馴染とキャンプにいった時の夢。 ああ、泣いたね。 寝ながら泣いてたね。 無慈悲に幸福な夢から俺を救出したのは、呼び鈴の音だった。 無視し続けてると、俺の名を呼ぶ声がした。 ドアを開けると、見慣れない女が立っていた。 なんか条件反射的に喜んじまったけど、その目つきを見て、俺は思い出した。 そいつは俺の寿命の査定をした女だったんだ。 「今日から監視員を務めさせていただくミヤギです」 そう言うと、ミヤギと名乗る女は俺に軽く会釈した。 監視員。そういえば、そんな話もあったっけ。 二日酔いの頭で昨日の記憶を探りつつ、俺はトイレに駆け込んでもう一回吐いた。