コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
「その幼馴染さんですけど」とミヤギは告げる。 「十七歳で出産してるんです。で、高校を退学。 十八歳で結婚しますが、十九歳で離婚してます。 二十歳の現在は、一人で子育てしてますね。 ちなみに二年後、首吊り自殺することになってます。 いま会いにいくと、多分『お金貸せ』とか言われますよ。 あなたのこと、ほとんど覚えてませんし」 俺がどんな反応を示したかって? そりゃ、がっつり傷ついたさ。 がっつりな。 一番大切な記憶を台無しにされたんだからな。 情けない話なんだが、二十歳になっても、俺の根っこの部分はどこまでもピュアと言うか… ナイーヴというかセンシティヴというか… ようするに子供の頃から成長していなかったんだな。 何かが変わったり、何かが終わっていく、そういうことが、いまだに耐えらないんだよ。 成人男性のくせにカナリヤ並に敏感なんだ。 それでも俺は極力気にしていないふりをして、「ふうん」と言いながら煙草に火を点けた。 三本くらい吸うと、体調が悪いせいか、嫌な感じに頭が痛くなってきてたな。 でも吸い続けた。 色んなことを忘れるために。 ミヤギは部屋のすみに戻っていった。 で、ノートにさらさらと何かを書いてたな。 気が付くと、いつの間にか日が落ちていた。 俺は自分の書いたリストに目を落とし、幼馴染の項に取り消し線を引いた。 それからもう一度リストをじっくり眺めて、電話を手に取り、ゆっくりボタンを押した。 『どうしたの? 珍しいね、あんたからかけてくるなんて』 お袋の声を聞くのは、本当に久しぶりだった。 バイトと勉強が忙しくて電話をする暇がなかったからな。 「急で悪いけど、今から実家に帰っていいかな」。 俺はお袋にそう聞くつもりだったんだ。