コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
同世代の女の子に見られてるのを意識しだすと、行動のひとつひとつがおかしくなるんだよ。 「自然体っぽい格好よさ」を出そうとしちまうんだな。 気付くと髪を触ってるんだ。完全に自意識過剰だ。 こういうことたまに考えちゃうんだよなぁ 自分の生きている価値というかなんと言うかしばらくは、手元に残ってた本の中でも一番難解な 「フィネガンズ・ウェイク」を読んで格好つけてた。 当然、内容はさっぱり頭に入ってこなかった。 余命三ヶ月だってのに、何をやってるんだろな。 読書に飽きた俺は近所のスーパーに行って、グラス付きのウイスキーと氷を買った。 ミヤギも菓子パンやら何やらを買いこんでた。 それを見た俺は、なんか幸せな錯覚に陥ってさ。 実を言うと、俺には昔から憧れがあったんだよ。 同居してる子と部屋着のままスーパーに行って、食材とかお酒を買って帰ってくる、って行為に。 羨ましいなー、って思いながらいつも見てた。 だから、たとえ監視が目的だろうと、若い女の子と夜中のスーパーで買物するってのは楽しかったんだ。 むなしい幸せだろ?でも本当だから仕方ない。 家に帰って、ウイスキーをちびちび飲んでいるうちに、俺は久しぶりに良い気分になってきた。 こういうとき、アルコールってのは偉大だな。 部屋のすみでノートに何かを書いているミヤギに俺は近づき、「一緒に飲まない?」と誘ってみた。 「結構です。仕事中なので」ミヤギはノートから顔も上げずに断った。