コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
「そうですねえ」とミヤギは足を崩しながら言う。 「まず一つ言えるのは、あなたが売った三十年の中で、あなたが誰かに好かれることはありません」 「それって悲しいことだよな」と俺は他人事のように言った。 「あなたは誰のことも好きになることができず、そんなあなたを周りの人間が好きになるはずもなく、相互作用でどんどんあなたと他人の距離は開いて、最終的に、あなたは世界に愛想を尽かされるんです」ミヤギはそこでちらっと俺の目を見た。「『それでも、いつかいいことがあるかもしれない』。そんな言葉を胸にあなたは五十歳まで生き続けますが、結局、何一つ得られないまま、一人で死んでいきます。最後まで、『ここは俺の場所じゃない』って嘆きながら」 「それって悲しいことだよな」と俺は機械的に繰り返した。 でも内心、やっぱりしっかり傷ついていた。 ただ、かなり納得できる話でもあったな。 さらにミヤギが続けた話によれば、俺は四十歳でバイク事故を起こすらしい。 その事故で顔の半分を失い、歩けなくなるとか。かなり気のめいる話だったが、一方で、それを経験する前に死ねることを考えると、案外俺はラッキーなのかもしれないと思った。 そうなんだよな、半ば期待する余地があるから、五十年も無意味な人生を送ったりしちまうんだ。 完全に良いことが何もないって分かってれば、逆に何の未練もなく逝けるってもんだ。