コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
俺は気を紛らそうとして、テレビをつけた。 番組ではスポーツ特集をやっているらしかった。 まずいと思ってチャンネルを変えようとした頃には、弟の顔と名前がしっかり画面上に出ていた。 俺は反射的にグラスを投げつけてたね。 テレビが倒れて床に落ち、グラスの破片が飛び散る。 俺はふっと我に返り、ミヤギの方を見る。 彼女は明らかに警戒した様子で俺のことを見ている。 「弟なんだよ」と俺は努めて明るく言ったんだが、それが逆に本格的にイカれてる人っぽくて笑えたな。 「……弟さんのこと、あんまり好きじゃないんですね?」 ミヤギは軽蔑するような調子で言った。 「あんまりね」と俺はうなずいた。 隣の部屋から壁を殴る音がした。 割れたグラスを片付けたりなんかしていると、俺の酔いはまずい感じに醒めてきた。 このまま完全にアルコールが抜ければ、最悪の精神状態になるのが目に見えてた。 だから俺はある人に電話をかけたんだ。 思うに、これもまた最悪の選択だったな。 俺ってやつは、自分で自分の人生を悪い方向に転がすことにかけては一流なんだ。 電話の相手は、高校の頃の一番の友人だった。 数か月間一度も連絡をとってなかったのに、「今から会えないか」なんて無茶なことを言う俺に、友人は「今からそっちにいくよ」と快く応じてくれた。 その時は、ちょっと救われた気でいたな。 まだ俺のことを気に掛けてくれている人がいるんだ、って思った。 この上なく情けない話なんだけどさ、友人と会うにあたって、俺にはちょっとした下心があった。 このミヤギって子、見てくれはそれなりなんだよ。 愛想はないけど、ふるまいがかわいいんだ。 その子が俺の後ろをずっとついてくるわけ。