コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
そりゃ、それが監視員の仕事だからな。 でさ、スーパーを歩いてる最中、俺は思ったんだよ。 周りには、俺たち恋人同士に見えてるんじゃないか、って。 むしろそれ以外の何に見えるって言うんだろうな? 俺は、友人がそういった勘違いをしてくれることを期待してたんだ。 かわいい子を連れてることを自慢したかったのさ。 聞いてる方が恥ずかしくなるような動機だろ? だが俺にとっては切実だったんだ。 レストランのテーブルにつくと、ミヤギは俺の隣に座った。 俺は満足して、早く友人が来ないかとうずうずしてたね。 時計を見る。ちょっと着くのが早すぎたらしい。 友人が来るまでコーヒーでも飲んで待つことにした。 ウェイトレスが来ると、俺は自分の注文を言った後、ミヤギに向かって、「あんたはいいのか?」と聞いた。 すると彼女は気まずそうな顔をした。 「……あの、最初に言いませんでしたっけ?」 「何を?」と俺は聞きかえした。 「私、あなた以外には見えてないんですよ。 声も聞こえてないし、触っても気付かないんです」 ミヤギはウェイトレスの脇腹を突っついた。たしかに、無反応だった。 俺は目線を上げてウェイトレスの顔を見た。 「うわあ……」って目で俺のことを見てたね。 これはやっちまったな、と思った。 しばらく恥ずかしさで顔が真っ赤だった。 こうなると、友人に女の子を自慢するというささやかな夢も叶わなくなったわけだ。 二重にも三重にも惨めだったな。 俺の場合、寿命や健康や時間なんかより、惨めさを売った方がよっぽど金になりそうだ。 もう帰っちまおうかとも思ったけど、そこにちょうど友人が現れちまったんだ。 俺たちは大袈裟に再会の喜びを分かち合った。