コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
高校時代、俺たちは不満の塊だった。 ことあるごとに二人でマクドナルドに居座って、何時間でも愚痴を言い合ったもんだった。 多分、当時の俺たちが本当に言いたかったのは、「幸せになりてえなあ」の一言だったんだろう。 でもそれを口にするのが怖くて、俺たちは、何時間も呪詛を吐いてうさ晴らししてたんだ。 しかし、久しぶりに顔を合わせた友人は、たしかに愚痴こそ言うものの、あの頃とは何かが根本的に変わってしまっていた。 なんていうか、それは現実的で妥当な愚痴なんだな。 あの頃の理不尽で非現実的で的外れな愚痴とは違う。 今の彼が口にするのは、バイト先の愚痴とか、彼女の愚痴とか、そういうのなんだ。 俺は耐えられなくなってきてさ。友人の話は露骨な自慢話になっていくし、隣ではミヤギがぼそぼそ俺に話しかけてくる。 俺は二人に同時に話しかけられるのが大嫌いで、そういうことをされると、頭が破裂しそうになるんだ。 で、あっさりと限界を迎えた。 まあ、ただでさえ余裕がなかったのもあったんだろうな。 気が付くと、俺はミヤギに「黙ってろ!」って怒鳴ってたんだ。 店内が静まり返ったな。 数秒後、一気に血の気が引いて行った。 友人に何か言われる前に、俺は金を置いて席を立った。 いよいよ精神異常者みたいになってきてたな。 こりゃ三十万しかもらえないわけだ。 俺は夜道を歩いて帰った。酔いはすっかり醒め、体調は悪いくせに、目は冴えまくっていた。 ちっとも眠れそうになくて、俺はテレビを見ようと思ったが、そういえば自分でグラスをぶつけて破壊したんだった。 幸い音だけは出るみたいだったから、俺はそれを巨大で不親切なラジオだと思うことにした。 缶ビールを開けて、プリッツをつまみに飲む。