コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
ミヤギは俺の観察記録を書いているようだった。 俺のレストランでの愚行について書いてるんだろうな。 「なあ、さっきは怒鳴って悪かった」と俺は言った。 「確かに、あんたの言う通りだったんだ。 俺は適当な嘘でもついて、さっさと店を出るべきだった」 「そうですね」とミヤギはこっちを見ずに答えた。 「それを書き終えたら、一緒に飲まないか?」 「飲んで欲しいんですか?」と彼女は聞きかえしてきた。 「そりゃもうな。寂しいから」と正直に答えると、「悪いですけど、仕事中なんで無理です」と断られた。 じゃあ最初からそう言えよって話だよな。 夜が明けてきて、小鳥のさえずりが聞こえ始める。 ミヤギは一分寝て五分起きるみたいなサイクルで俺のことを監視しているようだった。 なんつうか、タフだよな。俺にはとてもできそうもない。 夕暮れになって、俺は目を覚ました。 にわかには信じられないかもしれないが、もともと俺はかなり真面目な性格なんだ。 十二時に寝て六時に起きるのが基本でさ。 夕焼けに照らされて目覚めるってのは、新鮮な感じだった。 部屋のすみを見ると、ミヤギは変わらずそこにいた。 いつの間にかシャワーを浴びたらしく、近くを通った時にせっけんの匂いがした。 同じ俺の部屋なのに、ミヤギのいる周辺だけはまったく異質の空間みたいな感じがしたな。 俺は例のリストを眺め、今日は遺書を書くことに決めた。 近所の商店で便箋を買ってくると、俺は万年筆を手に取った。 手紙なんて書くのは久しぶりだな、と思った。 最後にまともな手紙を書いたのはいつだろう?俺は記憶を探る。おそらくそれは、小六の夏。 あの夏、クラスの皆でタイムカプセルを埋めたんだ。