コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
銀色の球形のカプセルに、当時の宝物ひとつと、未来の自分への手紙を入れたんだよな。 皆、一生懸命書いてたな。案外面白いんだよ、あれ。 二十歳になったらそれを掘り出そうって決めてたけど、今のところ、何の連絡もきていなかった。 俺だけに連絡がきてないってことも考えられるが、十中八九、係のやつが忘れちまったんだろう。 そこで俺は思ったんだよ。 どうせ誰も掘り出さないなら、 俺一人でタイムカプセルを掘り出してやろう、ってさ。 そういうノスタルジックでロマンチックで、甘い感傷に浸らせてくれるものを俺は求めていた。 夜中になると、俺は電車で小学校に向かった。 スコップを納屋から拝借してくると、俺は体育館の裏に行って、穴を掘りはじめた。 すぐに見つかるもんだと思ってたんだけど、案外埋めた場所って覚えてないもんでさ。 ミヤギは、穴を掘り続ける俺を、近くに座ってぼうっと眺めてた。 なんとも奇妙な光景だっただろうな。 結局タイムカプセルが見つかったのは、穴を掘りはじめてから三時間後くらいで、その頃にはスコップを握る両手はマメだらけ、身体は汗まみれ、靴は泥だらけだった。 街灯の下に行って、俺はタイムカプセルを開けた。 自分の手紙だけ取りだそうと思ってたんだが、ここまで苦労したんだし、いっそのこと、全部に目を通しちまおうって俺は考えた。 顔も覚えてないようなクラスメイトの手紙を開く。 その瞬間まで俺は完全に忘れてたんだが、手紙には、最後に、こういう欄があったんだよ。「一番のお友達は誰ですか」っていう欄がさ。 これまでの流れからいって予想はつくけど、そこに俺の名前を書いてる奴は一人もいなかった。