コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
ミヤギに詰め寄って、俺は聞いた。 「なあ監視員さん」 「なんでしょうか」とミヤギは顔をあげた。 「たとえば今ここで、俺があんたに乱暴なんかしたら、本部とやらが俺を殺すまで、どれくらいかかる?」 彼女は特に驚かなかった。さめた目で俺を見て、「一時間もかからないでしょうね」とだけ答えた。 「じゃあ、数十分は自由にできるってわけか?」そう俺が聞くと、彼女は俺から目を逸らして、「誰もそんなこと言ってませんよ」と言った。 しばらく沈黙が続いた。 不思議なことに、ミヤギは逃げ出そうとはしなかった。 ただじーっと、自分を膝を見つめてた。 「……危険な仕事なんだな」 そう言って、俺はミヤギの二つ隣に座った。 彼女は俺から目を逸らしたまま、「ご理解いただけたようで何よりです」と言った。 俺の神経の昂りはすっかり収まっていた。 ミヤギの諦めきったような目を見ていたら、こっちまで悲しくなってきたんだよ。 「俺みたいなやつ、少なくないんだろう? 死を前にして頭をおかしくしちまって、監視員に怒りの矛先を向けるようなやつ」 ミヤギは首をゆっくり振った。 「あなたは、どちらかと言えば楽なケースですよ。 もっと極端な行動に出る人、たくさんいましたから」 「……何で、そんな危ない仕事を、あんたみたいな若い子がやってるんだ?」 俺がそう聞くと、ミヤギはぽつぽつと話し始めた。 話によると、彼女には借金があるらしかった。 原因は彼女の母親にあるのだという。 なんでも、たいした人生でもないくせに、借金までして寿命を買いあさったらしい。 それなのに病気であっさり死んでしまって、そのツケをこの子が払うことになったんだとか。 清々しいくらい胸糞悪い話だったな。