コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
「借金ですが、私の寿命を全部売って、ようやく返しきれるかどうかって額なんです。 あとちょっとで勝手に寿命を売られるところだったんですが、諦めかけた時、この監視員の仕事を紹介されたんですよ。 この仕事、大変ですが、稼ぎはすごくいいんです。 このまま続けていれば、私が五十歳になる頃には、全額返しきれてるんじゃないかと思います」 ”五十歳になる頃には”、か。 これもまた、げんなりさせられる話だった。 彼女はまるでそれを救いのように話してたが、自分が何かしたわけでもないのに、あと数十年、俺みたいなやつの相手をし続けなきゃいけないわけだろ? 「そんな人生、全部売っちまえばいいじゃねえか。 五十まで生き残れる保証なんてないんだろ?」 俺がそう言うと、彼女は少し困ったような顔をした。 「たしかに、実際、監視員の仕事をしてる中で監視対象に殺されてる人も、たくさんいますね。 でも……ほら、簡単には割り切れませんよ。 いつかいいことあるかもしれないじゃないですか」 「そう言ってて、五十年間何一つ得られないまま死んでいった男のことを、俺は一人知ってるぜ」 「それ、私も知ってます」とミヤギはちょっとだけ微笑んだ。 なんだか嬉しかったな。俺の冗談で彼女が笑ってくれたことが。 始発電車に乗り、スーツや制服に囲まれた中、俺は周りの目も気にせずミヤギに話しかけた。 「タイムカプセルの中でさ、『一番のお友達』に俺を選んでくれてる人はいなかったけど、それでもやっぱり幼馴染のあの子だけは、俺の名前を手紙の中で出してくれてたんだよ」 もちろん、周りにはミヤギの姿が見えていないから、ひとりごとを言っているように見える。完全に不審者だ。