コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
外見にそれなりに金をかけたおかげか、幼馴染は俺のことを気に入ってくれたみたいだった。 「ずいぶん変わったね」と言いながらべたべたしてくる。 なんていうかさ、いける感じの雰囲気だったんだよ。 訓練の成果と、未来を知ってるがゆえの余裕もあって、俺はかなりの好印象を幼馴染に与えることに成功してた。 しかし俺ってやつはさ、本当に物事を 台無しにしないと気が済まないらしいんだよな。 近況を語りたがる幼馴染の話をさえぎって、何と俺は、寿命を売った件について話し始めたんだよ。 「あのさ、俺、余命三か月しかないんだよ」って同情を引くような調子で語りはじめたんだ。 心のどこかで俺は、この幼馴染なら、俺の話を真面目に聞いてくれる、俺に深く同情し、慰めてくれるって信じてたんだろうな。 でも話が始まって五分とたたずに、幼馴染は退屈そうな反応を示し出した。 馬鹿にしたような顔で、「ふーん?」とか言うのな。 もちろん間違ってるのは俺で、悪いのは俺なんだ。 俺だって突然、寿命を買い取る店がどうだの監視員がこうだの言われても、信じないだろう。 大笑いされなかっただけマシだと思う。 幼馴染は「ちょっと失礼」と言って立ち上がった。 トイレにでも行くんだろう、と俺は思ってた。 その直後に、注文した料理が二人分届いた。 俺は早く続きを話したくて仕方なかったな。 でも幼馴染は戻ってこなかった。 料理が冷めるまで待ったけど、戻ってこなかった。 また俺は”やっちまった”わけだ。 俺は冷めたパスタをゆっくり食べた。 しばらくすると、ミヤギが正面に座って、幼馴染の分のパスタをぱくぱく食べ始めた。 「冷めてもおいしいですね」とミヤギは言った。 俺は何も言わなかった。