コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
監視員は言う、「別に無意味なことだっていいんですよ。 私が担当した人の中には、余命二か月すべてを、走行中の軽トラックの荷台に寝そべって空を見上げることに費やした人もいるんです」 「のどかだな、そりゃ」と俺は笑った。 さらにミヤギは、こう言った。 「考える時は、外に出て歩くのが一番です。お気に入りの服に着替えて、外に出ましょう」 いいこと言うじゃないか、と俺は思った。 段々とこの子は、俺に優しくなってきているように見える。 もしかすると、監視員は監視対象との接し方が決まっていて、彼女はそれに従っているだけなのかもしれないが。 俺はミヤギのアドバイスに従って外を歩いた。 ものすごい日差しが強い日だったな。髪が焦げそうだった。 すぐに喉が渇いてきて、俺は自販機でコーラを買った。 「あ」、と俺は小さく声を漏らした。 「どうしました?」 「……いや、実にくだらない事なんだけどさ。 好きなもの、一つだけあったことを思いだした」 「言ってみてください」 「俺、自動販売機が大好きなんだよ」 「はあ。……どこら辺が好きなんですか?」 「なんだろな。具体的には自分でも分からないんだが、子供の頃、俺は自動販売機になりたかったんだ」 きょとんとした顔でミヤギは俺の顔を見つめる。 「あの、確認ですけど、自動販売機って、コーヒーとかコーラとか売ってるあれですよね?」 「ああ。それ以外も。焼きおにぎり、たこ焼き、アイスクリーム、ハンバーガー、アメリカンドッグ、フライドポテト、コンビーフサンド、カップヌードル……自販機は実に様々なものを提供してくれる。 日本は自販機大国なんだよ。発祥も日本なんだ」 「んーと……個性的な趣味ですね」