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なんとかミヤギはフォローを入れてくれる。 実際、くだらない趣味だ。見方によっては、鉄道マニアを更に地味にしたような趣味。 くだらねー人生の象徴だよなあ、と自分で思う。 「でも、なんとなく分かる気はします」 「自販機になりたい気持ちが?」 「いえ、さすがにそこまでは理解不能ですけど。 自販機って、いつでもそこにいてくれますから。 金さえ払えば、いつでも温かいものくれますし。 割り切った関係とか、不変性とか、永遠性とか、なんかそういうものを感じさせてくれますよね」 俺はちょっと感動さえしてしまった。 「すげえな。俺の言いたいことを端的に表してるよ」 「どうも」と彼女は嬉しくもなさそうに言った。 そういうわけで、俺の自販機巡りの日々が始まった。 原付に乗って、田舎道をとことこ走る。 自販機を見かけるたびに何か買って、ついでに安物の銀塩カメラで撮影する。 別に現像する気はないんだけど、何となくな。 そんな無益な行為を数日間繰り返した。 こんなくだらない趣味一つをとっても、俺よりもっと本格的にやっている人が沢山いて、その人たちには敵わないってことも知っている。 でも俺は一向に構わなかった。なんか生きてる感じがした。 俺のカブ110は幸いタンデム仕様だったので、ミヤギを後ろに乗せて、色んなところをまわれた。 ようやくやりたいことが見つかって、天気にも恵まれて、俺の生活は一気にのどかなものに変わった。 原っぱに腰を下ろして、俺は煙草を吸っていた。 隣では、ミヤギがスケッチブックに絵を描いていた。 「仕事しなくていいのか?」と声をかけると、ミヤギは手を止めて俺の方を向いて、「今のあなた、悪いことしなさそうですから」と言った。