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□メッセージ
ある日、俺が目を覚まして部屋のすみを見ると、そこにいつもの子の姿はなくて、代わりに、見知らぬ男がかったるそうに座っていた。 「……いつもの子は?」と俺はたずねた。 「休日だよ」と男は答えた。 「今日は、俺が代理だ」そうか、監視員にも休日とかあるんだな。 「へえ」と俺は言い、あらためて男の姿を眺めた。 露天商とかにいそうな感じの、うさんくさい男だった。 すげえ遠慮のない感じで存在感を撒き散らしてたな。 「お前の寿命、最安値だったらしいな?」 男は露骨に俺をからかうような調子で言う。 「すげえすげえ。そんなやついるんだな」 「すげえだろ? なり方を教えてやろうか?」 俺が淡々と返すと、男はちょっと驚いたような顔をした。 「……へえ、お前、結構余裕あるみたいだな?」 「いや、しっかり今ので傷ついてる。強がりさ」 男は俺の発言が気に入ったらしく 「お前みたいな奴、嫌いじゃないよ」と笑った。 監視員が男になったことによって、俺はかなりリラックスできるようになった。 男はそんな俺の様子を見て、言う。 「女の子が傍にいると落ち着かねえだろ? なんかキリっとしたくなるよな。分かるぜ」 「そうだな。あんたの傍は落ち着くよ。あんたになら、どう思われようと構わないから」 俺は『ピーナッツ』を読みながらそう答えた。 ミヤギの前では恥ずかしくて読む気になれなかった本。 そう、実を言うと、俺はスヌーピーが大好きなんだ。 「そうだろうな。……ああそうだ、ところでお前、結局、寿命を売った金は何に使ったんだ?」 そう言うと、男は一人でくっくっと笑った。 「一枚ずつ配って歩いた」と俺は答えた。 「一枚ずつ?」と男はいぶかしげに言った。