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「……でも、気持ちはすごくよくわかるんですよ。 私があなたに三十万円与えたのも、似たような理由からですから。 さみしくて、かなしくて、むなしくて、自棄になったんですよ。 それで、極端な利他行為に走ったりしたんです」 「でも、落ち込むことなんてありませんよ。少なくとも私にとって、今のあなたは三千万とか三億の価値がある人間なんです」 「変な慰めはよしてくれよ」と俺は苦笑いした。 「本当ですよ」とミヤギは真顔で言う。 「あんまり優しくされると、逆に惨めになるんだ。 あんたが優しいことは十分に知ってる。だから、もういい」 「うるさいですね、だまって慰められてくださいよ」 「……そんな風に言われたのは初めてだな」 「というか、これは慰めでも優しさでもないんです。 私が言いたいことを勝手に言ってるだけですよ」 「……あなたにとっては、何でもないことでしょうけどね」 そう言うと、ミヤギはちょっと恥ずかしそうにうつむく。 「私、あなたが話しかけてくれることが、嬉しかったんですよ。 人前でも構わずに話しかけてくれることが、すごく嬉しかったんです。 私、ずっと透明人間だったから。無視されるのが、仕事だったから。 普通の店でお話しながら食事したり、一緒にショッピングしたり、そんな些細なことが、私にとっては夢みたいでした。 場所も状況も選ばず、どんな時も一貫して私のことを ”いる”ものとして扱ってくれた人、あなたが初めてだったんですよ」 「あんなことでよけりゃ、いつでもやってやるよ」 そう俺が茶化すと、ミヤギはいじらしい笑顔を浮かべた。 「そうでしょうね。だから、好きなんです。あなたのこと」