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いなくなる人のこと、好きになっても、仕方ないんですけどね。 そう言って、彼女はさみしそうに笑った。 俺はしばらく口がきけなかったな。 ほとんど処理落ちしたみたいになっちまって。 気を抜いたらぼろぼろ泣いちまいそうだったな。 おいおい、このタイミングでそれは卑怯だろ、って。 この時、無意味で短い俺の余生に、ようやくひとつの目標ができる。 ミヤギの一言は、俺の中にすさまじい変革をもたらしたんだ。 俺は、どうにかして、ミヤギの借金を全部返してやりたいと思った。 一生が百円に満たないこの俺が、だ。 身の程知らずにもほどがあるよな。 生活は一気に変わった。俺は自分に言い聞かせた。 考えろ、考えろ、考えろ。 どうすれば残り数ヶ月で彼女の借金を返せる? どうすれば彼女が安全に暮らしていけるようになる? こういうときに宝くじを買ったり賭け事をしてもうまくいかないってことは分かっていた。 いつだって、賭け事は金があまってるやつが勝つし、宝くじは変化を望んでないやつが当たるんだよ。 俺はかつてのミヤギのアドバイスに従い、ひたすら街を歩きながら考えたんだ。 次の日も、その次の日も、その次の日も。 どこかに、自分にぴったりな答えが転がってると期待して。 その間、口にはほとんど物を入れなかったな。 空腹がある一定のラインを越えると、頭が冴え渡ることが分かったからだ。ミヤギはそんな俺のことを心配してか 「ねえ、自販機めぐりに戻りましょうよ」と何度も言った。 「私も自販機見るの好きになっちゃったんです。 あなたの背中にしがみついてるのも、好きだし」 それでも俺は歩き続け、考え続けた。