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□メッセージ
「だって、自分一人の力じゃ、どうにもならないんでしょう? と来たら、他人の力を借りるしかないじゃないですか。 俺、個人の力ってのをそこまで信用してないんすよ」 参考になるんだかならないんだか分からないアドバイスだったな。 外ではいつの間にか、夏特有の大雨が降ってた。 俺が店を出ようとすると、さっきの兄ちゃんが傘を貸してくれた。 「よく分かんないけど、何か成し遂げたいなら、まず健康は欠かせませんからね」とか言ってさ。 俺は傘をさして、ミヤギと並んで帰った。 小さい傘だったから、お互い肩がびしょ濡れになった。 傍から見たら俺は、見当違いな位置に傘をさしてる馬鹿に見えただろうな。 「こういうの、好きだなあ」とミヤギが笑う。 「どういうのが好きなんだ?」と俺は聞きかえす。 「周りには滑稽に見えるかもしれないけど、あなたが左肩を濡らしてることには、すっごく温かい意味がある、ってことです」 「そうか」と俺ははにかみながら言った。 「恥知らずの、照れ屋さん」とミヤギは俺の肩をつついた。 すれ違う人たちが俺のことを不審そうに見ていた。 そこで、俺はあえてミヤギと話し続けてやった。 ここまでくると異常者扱いされるのが逆に楽しかったし、何より、こうすることでミヤギは喜んでくれるから。 俺が滑稽になればなるほど、ミヤギは笑ってくれるから。 商店の軒先で雨宿りしていると、知った顔に出会った。 同じ学部の、挨拶程度は交わす中の男だ。 そいつは俺の顔を見ると、怒ったような顔で近づいてきた。 「お前、最近いったいどこで何してたんだ?」 俺はミヤギの肩に手をおいて、言った。 「この子と遊び回ってたんだよ。ミヤギっていうんだ」