コピーフォーム
□ハンドル
□メッセージ
「だからこそ、三十万を無駄に使ってしまったこと、そして彼女を疑ってしまったことへの償いがしたいし、何より、彼女の借金を少しでも減らしてやりたいんです。 あの子には、こんな危ないことを続けさせたくないんですよ」 でも、俺が真面目になればなるほど、世界はしらけるんだ。 男はうさんくさそうな顔をしてたね。 俺の話なんて、ちっとも信じちゃいなかったんだ。 多分こいつは、話でも聞いてやれば、また俺が金をくれるとでも思ってたんだろうな。 男が去り、俺が帰り支度を始めると、今度は後ろに座っていたおっさんに声を掛けられた。 「すみません。盗み聞きする気はなかったんですけど、さっきの話、つい最後まで聞かせてもらっちゃいました」 安物のスーツを着たおっさんは、頭をかきながらそう言った。 「……で、率直に、どう思いました?」と俺は聞いた。 「その子、きっと、そこにいるんでしょう?」 おっさんはミヤギのいるあたりを見ながら言った。 「おお、よく分かりますね。そうなんですよ、かわいいんです」 俺はそう言ってミヤギの頭を撫でた。 ミヤギはくすぐったそうに目をつむっていた。 「やっぱりそうですよね。……あの、申しわけないんせんが、少々お二人の時間をいただいてもよろしいでしょうか?」 ”お二人”の箇所を強調して、おっさんは言った。 おっさんは言う。 「自分語りになってしまいそうですから手短に済ませますが、クスノキさん、私もあなたと似たような経験があります。 ちょうど私があなたくらいの歳だった頃、三歳上の兄が、まさにミヤギさんがあなたにそうしてくれたような方法で、どん底にいた私のことを救ってくれたんです。