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□メッセージ
その声に、俺は聞き覚えがあったんだよ。 一日や二日で忘れられるもんじゃない。 俺にその声を忘れさせたかったら、三百年は必要だね。 声のした方を向く。 俺は確信していたんだ。 聞き間違えるはずはなかった。 でも実際に見るまでは、信じられなかった。 「そのミヤギって人は、ろくでもない女ですね」 ミヤギはそう言うと、自分でくすくす笑った。 「……すごいですよね、たった三十日で、私の人生の大半を買い戻しちゃったんですから」 隣に座ったミヤギは、俺によりかかりながらそう言った。 周りの人間はあぜんとした顔でミヤギを見てたね。 そりゃまあ、実在してるとは思わなかっただろうなあ。 「あんた、もしかしてミヤギさん?」と一人の男が訊ねて 「そうです。ろくでもないミヤギです」 と彼女が答えると、俺の手を取って「良かったな!」と祝ってくれた。 だが、当の俺はまだ事情を飲み込めずにいた。 なんでミヤギがここにいるんだ? どうして周りの人の目にミヤギが映ってるんだ? ミヤギは俺の手を握り、説明してくれた。 「つまり、私もあなたと同じことをしたんですよ」 俺が寿命を三日だけ残して売った直後、あの代理監視員の男が、彼女に連絡したらしい。 『クスノキとかいう男、自分の寿命をさらに削って、お前の借金をほとんど返しちまったぜ』、ってさ。 それを聞いたミヤギは、すぐに決断したそうだ。 「三日残して、あとは全部売っちゃいました」 とミヤギは言った。 「おかげで、借金を返しても、まだまだお金があまってます。 三日間だけじゃ、とっても使い切れないくらい」 あれ?なんだろう 今日は暑くも無いのに目から汗がでるぜ