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題名:☆慶チン⌒☆の部屋
☆慶チン☆
2013/04/17 01:13

まいどト樢Q

慶チンでふ(≧▽≦)ゞ

腕はありまてんが、オセロ好きでふヘ

仲良くしてくれてる方もまだそうでない方も遊びに来てコメしてに

よろちく〇〜


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書き込み

No.216 ☆慶チン☆
2013/05/10 23:13


視野はどんどん狭まって、思考も偏っていって、とてもアイディアなんか思いつく状態じゃなかったな。

気が付くと、以前よく訪れていた古書店の前にいた。

俺は店長の爺さんの顔が恋しくなって、中に入った。

爺さんはいつも通り、野球中継を聞きながら本を読んでいた。

俺はこの数十日で起きた一連の出来事を彼に話したかったが、そんなことしたら爺さんが罪悪感を覚えるかもしれないから、結局あの店には行かなかったふりをすることにした。

何気ない会話を、二十分くらい交わした。

会話は全然噛み合ってなかったんだが、それでも俺は独特の安らぎを覚えたな。

去り際、俺はさりげなく爺さんに訊ねた。

「自分の価値を高めるには、どうすればいいと思います?」

爺さんはラジオのボリュームを落とした。

「そうさな。堅実にやる、しかねえんじゃないか。

それは俺には出来なかったことなんだけどな。

なんつうかな、結局、目の前にある

『やれること』を

一つ一つ堅実にこなしていく

こと以上にうまいやり方はねえんだ。


――だが、それよりももっと大切なことがある。

それは『俺みたいな人間のアドバイスを信用しない』ってことだ。

成功したことがないくせに成功について語っちまうようなやつは、自分の負けを認めたがらないクズばっかりだからな」

古書店を出た俺は、その流れで、いつも通っていたCDショップに足を運んだ。

店員の兄ちゃんには、爺さんについたのと同じ嘘をついた。

しばらく最近聴いたCDの話をした後、俺はこう聞いた。

「限られた期間で何かを成し遂げるには、どうすればいいんでしょうね?」

「人を頼るしか、ないんじゃないっすかね」と彼は言った。


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No.217 ☆慶チン☆
2013/05/11 00:20


「だって、自分一人の力じゃ、どうにもならないんでしょう?
と来たら、他人の力を借りるしかないじゃないですか。
俺、個人の力ってのをそこまで信用してないんすよ」

参考になるんだかならないんだか分からないアドバイスだったな。

外ではいつの間にか、夏特有の大雨が降ってた。

俺が店を出ようとすると、さっきの兄ちゃんが傘を貸してくれた。

「よく分かんないけど、何か成し遂げたいなら、まず健康は欠かせませんからね」とか言ってさ。

俺は傘をさして、ミヤギと並んで帰った。

小さい傘だったから、お互い肩がびしょ濡れになった。

傍から見たら俺は、見当違いな位置に傘をさしてる馬鹿に見えただろうな。

「こういうの、好きだなあ」とミヤギが笑う。

「どういうのが好きなんだ?」と俺は聞きかえす。

「周りには滑稽に見えるかもしれないけど、あなたが左肩を濡らしてることには、すっごく温かい意味がある、ってことです」

「そうか」と俺ははにかみながら言った。

「恥知らずの、照れ屋さん」とミヤギは俺の肩をつついた。

すれ違う人たちが俺のことを不審そうに見ていた。

そこで、俺はあえてミヤギと話し続けてやった。

ここまでくると異常者扱いされるのが逆に楽しかったし、何より、こうすることでミヤギは喜んでくれるから。

俺が滑稽になればなるほど、ミヤギは笑ってくれるから。

商店の軒先で雨宿りしていると、知った顔に出会った。

同じ学部の、挨拶程度は交わす中の男だ。

そいつは俺の顔を見ると、怒ったような顔で近づいてきた。

「お前、最近いったいどこで何してたんだ?」

俺はミヤギの肩に手をおいて、言った。
「この子と遊び回ってたんだよ。ミヤギっていうんだ」


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No.218 ☆慶チン☆
2013/05/11 00:55


「笑えねえよ」と彼は不快そうな顔をして言った。

「あのな、クスノキ。前から思ってたが、お前病んでるんだよ。

人と会わないで自分の殻にこもってるから、そういうことになるんだ」

「あんたがそう思うのも、無理はないよな。俺があんたの立場だったら同じ反応を示したと思う。

でも、確かにミヤギはここにいるんだよ。その上、かわいいんだ」

俺はそう言って一人で大笑いした。

彼はあきれた顔をして去っていったな。

通り雨だったらしく、雨はすぐにやみ始めた。

空には、うすぼんやりと虹が浮かんでいたな。

「あの、さっきの……ありがとうございます」

ミヤギはそう言って俺に肩を寄せた。

”堅実に”、か。

俺は古書店の爺さんのアドバイスを思い出していた。

考えてみれば、俺にはできる事があるんだよな。

『借金を返す』って考えに縛られてたけどさ、こうやって俺が周りに不審者扱いされることだけでも、彼女はずいぶん救われるらしいじゃないか。

そうなんだよ。俺は彼女に、確実な幸せを与えられるんだ。

目の前にやれることがあるのに、どうしてそれをやらない?

バスに乗って、俺たちは湖に向かった。

そこで俺がやらかしたことを聞いたら、大半の人間は眉をひそめるだろうな。

周りには一人客に見えているのを承知で、俺は「あひるボート」に乗ってやったんだ。

係員の男が「一人で?」という顔をしたので、俺は彼には見えていないミヤギに向かって、「さあ、行こうぜ」とか声をかけてやった。

係員、半分怯えたような目をしてたな。

ミヤギはおかしくてしかたがないらしく、ボートに乗っている間もずっと笑っていた。

「だって、成人男性一人であひるボートですよ?」


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No.219 ☆慶チン☆
2013/05/11 01:07


「なんか、一つの壁を越えた気がするね」と俺は言った。

一人あひるボートの後も俺は、一人観覧車、一人メリーゴーランド、一人水族館、一人シーソー、一人プール、一人居酒屋…

とにかく一人でやるのが恥ずかしいことは大体やったな。

どれをやるにしても、俺は積極的にミヤギに話しかけた。

頻繁に彼女の名前を呼び、手をつないで歩いた。

段々と、俺は不名誉な感じの有名人になっていった。

俺の顔見るだけで指差して笑う人も、かなりいたな。

ただ、幸運なことに、俺はいつでも幸せそうな顔をしてたから、俺を見て逆に楽しい気分になる人もそこそこいたらしいんだ。

そして、俺の行為をパフォーマンスだと思い込む人も増え始めたんだな。

俺のこと、腕の立つパントマイマーだと褒めちぎるやつもいた。

逆に、「ミヤギさんは元気?」とかたずねてくる人も現れ始めてさ。

そう、徐々にだが、ミヤギの存在は受け入れられ始めたんだよ。

もちろん皆、透明人間の存在を本気で信じたわけじゃなくて、なんつーか、俺のたわごとを、共通の“お約束”として扱い、俺に話を合わせてくれるようになった、って感じ。

俺は「可哀想で面白い人」扱いを受けるようになったんだ。

この夏、俺はこの街で、一番のピエロだったんじゃねーかな。

良くも、悪くも。


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No.220 ☆慶チン☆
2013/05/11 01:23


そうそう、居酒屋で一人乾杯をしてたとき、俺は隣の席の男に声を掛けられたんだ。

「あのときの人ですよね?」とか言われた。

こっちは向こうに見覚えがなかったんだが、そのいかにも音大生って感じの男は、どうやら、あの日俺が一万円を配ったうちの一人らしかった。

「最近、あなたの噂をよく聞きますよ。

まるで隣に恋人がいるかのようにふるまう、一人で幸せそうにしている男の人の噂」

「そんなやつがいるんですねえ」と俺は言い、「聞いたことある?」とミヤギにふった。

ミヤギは「知りませんねー」と言って笑った。

男はそんな俺の様子を見て、苦笑いする。

「……あの、僕には何となく分かるんですよ。

あなたの一連の行動には、深いわけがあるんでしょう?

よかったら、僕に話してくれませんか?」

そんな風に聞いてくれた人は初めてだったな。

俺は彼の手を取って、深く礼を言った。

それから話したんだよ、今までのこと。貧乏だったこと。寿命を売ったこと。監視員のこと。
親のこと。友人のこと。タイムカプセルのこと。
未来のこと。幼馴染のこと。自販機のこと。

そして、ミヤギのこと。

話の途中、俺はつい口を滑らせて、こんなことを言った。

「本人に直接言ったことはないんですけどね、俺、ミヤギのこと、自分でもどうしたらいいのか分からないくらい、深く愛してるんですよ」

隣にいた本人は酒をこぼしそうになってたな。

だってその通り、俺が直接ミヤギに対して「愛してる」なんて言ったことは一度もなかったから。

ミヤギの反応が面白くて、俺は笑い転げたな。


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