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題名:☆慶チン⌒☆の部屋
☆慶チン☆
2013/04/17 01:13

まいどト樢Q

慶チンでふ(≧▽≦)ゞ

腕はありまてんが、オセロ好きでふヘ

仲良くしてくれてる方もまだそうでない方も遊びに来てコメしてに

よろちく〇〜


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書き込み

No.211 ☆慶チン☆
2013/05/10 22:29


ある日、俺が目を覚まして部屋のすみを見ると、そこにいつもの子の姿はなくて、代わりに、見知らぬ男がかったるそうに座っていた。

「……いつもの子は?」と俺はたずねた。

「休日だよ」と男は答えた。

「今日は、俺が代理だ」そうか、監視員にも休日とかあるんだな。

「へえ」と俺は言い、あらためて男の姿を眺めた。

露天商とかにいそうな感じの、うさんくさい男だった。

すげえ遠慮のない感じで存在感を撒き散らしてたな。

「お前の寿命、最安値だったらしいな?」
男は露骨に俺をからかうような調子で言う。

「すげえすげえ。そんなやついるんだな」

「すげえだろ? なり方を教えてやろうか?」
俺が淡々と返すと、男はちょっと驚いたような顔をした。

「……へえ、お前、結構余裕あるみたいだな?」

「いや、しっかり今ので傷ついてる。強がりさ」

男は俺の発言が気に入ったらしく

「お前みたいな奴、嫌いじゃないよ」と笑った。

監視員が男になったことによって、俺はかなりリラックスできるようになった。

男はそんな俺の様子を見て、言う。

「女の子が傍にいると落ち着かねえだろ?
なんかキリっとしたくなるよな。分かるぜ」

「そうだな。あんたの傍は落ち着くよ。あんたになら、どう思われようと構わないから」

俺は『ピーナッツ』を読みながらそう答えた。
ミヤギの前では恥ずかしくて読む気になれなかった本。

そう、実を言うと、俺はスヌーピーが大好きなんだ。

「そうだろうな。……ああそうだ、ところでお前、結局、寿命を売った金は何に使ったんだ?」

そう言うと、男は一人でくっくっと笑った。

「一枚ずつ配って歩いた」と俺は答えた。

「一枚ずつ?」と男はいぶかしげに言った。


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No.212 ☆慶チン☆
2013/05/10 22:36


「ああ。一万円を三十枚、三十人に一枚ずつ。

本当は人にあげるつもりだったが、考えが変わった」

すると男はタガが外れたように笑い出したんだ。

それから、俺にこんな質問をしてきたんだよ。

「なあ、お前――まさか、本当に自分の寿命が三十万だって言われて信じちゃったのか?」

「どういうことだ?」と俺は男に聞いた。

「どういうも何も、言葉そのままの意味だ。

本当に自分の寿命、三十万だと思ったのか?」

「そりゃ……最初は、安すぎると思ったが」

男は床を叩いて笑う。

俺は不愉快になってきた。

「そうかそうか。俺からはちょっと何も言えないが、まあ、今度あの子に会ったら、直接聞いてみな。

『俺の寿命、本当に三十万だったのか?』ってな」



次の朝、アパートにやってきたミヤギに、俺は男に言われた通りのことを訊ねてみた。

「もちろんですよ」と彼女は答えた。

「残念ですが、あなたの価値、そんなものなんですよ」

「ふうん」と俺が小馬鹿にしたような態度で言うと、ミヤギは俺が何かに気付いていることを察したらしく

「代理の人に、何か言われたんですか?」と俺に聞いた。

「俺はただ、もう一回確認してみろって言われただけさ」

「……そんなこと言っても、三十万は三十万ですよ」

あくまでしらを切り通すつもりらしいんだな。

「最初は、あんたがネコババしてると思ったんだ」ミヤギは、ちょっとだけ目を見開いてこちらを見た。
「俺の本来の値段は三千万とか三億なのに、あんたがこっそり横領したんだと思ってた。


……でも、どうしても信じられなかったんだよな。

何か俺は根本的な勘違いをしてるんじゃないか、と思った。

それで一晩考え続けて、ふと気づいたんだ。



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No.213 ☆慶チン☆
2013/05/10 22:43


――そもそも俺は、前提から間違ってたんだな。

どうして寿命一年につき一万円という値段が、最低買取価格だなんて信じてたんだろう?

どうして人の一生が本来数千万や数億で売れて当たり前だなんて信じてたんだろう?

多分よけいな前知識がありすぎたんだな。

自分の勝手な常識に物事を当てはめ過ぎた。

俺はもっと、柔軟に考えるべきだったんだ」

俺は一呼吸おいて、それから言った。



「なあ、どうして見ず知らずの俺に、
あんたが三十万も出す気になったんだ?」



ミヤギは俺の言葉の意味を分かっているみたいだったが

「何を言ってるのかさっぱりわかりませんね」と言って、
いつものように部屋のすみに腰を下ろした。

俺はミヤギが座っている位置の対角線上にある部屋のすみに移動して、彼女と同じように三角座りをした。

ミヤギはそれを見て、ちょっとだけ微笑んだ。

「あんたがしらんぷりするなら、それでもいい。
でも一応言わせてもらうよ。ありがとう」

俺がそう言うと、ミヤギは首をふった。

「いいんですよ。こんな仕事ずっと続けてたら、どうせ借金を返し終わる前に死んじゃうんです。仮に払い終えて自由の身になったとしても、楽しい人生が約束されてるわけでもないし。

だったらまだ、そういうことに使った方がいいんです」

「実際のとこ、俺の価値っていくらだったんだ?」

ミヤギは「……三十円です」と小声で言った。

「電話三分程度の価値か」と俺は笑った。

「悪かったな、あんたの三十万、あんな形で使っちまって」

「そうですよ。もっと自分のために使って欲しかったです」

怒ったような言い方をしつつも、ミヤギの声は優しげだった。


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No.214 ☆慶チン☆
2013/05/10 22:52


「……でも、気持ちはすごくよくわかるんですよ。

私があなたに三十万円与えたのも、似たような理由からですから。

さみしくて、かなしくて、むなしくて、自棄になったんですよ。

それで、極端な利他行為に走ったりしたんです」

「でも、落ち込むことなんてありませんよ。少なくとも私にとって、今のあなたは三千万とか三億の価値がある人間なんです」

「変な慰めはよしてくれよ」と俺は苦笑いした。

「本当ですよ」とミヤギは真顔で言う。

「あんまり優しくされると、逆に惨めになるんだ。
あんたが優しいことは十分に知ってる。だから、もういい」

「うるさいですね、だまって慰められてくださいよ」

「……そんな風に言われたのは初めてだな」


「というか、これは慰めでも優しさでもないんです。
私が言いたいことを勝手に言ってるだけですよ」


「……あなたにとっては、何でもないことでしょうけどね」
そう言うと、ミヤギはちょっと恥ずかしそうにうつむく。

「私、あなたが話しかけてくれることが、嬉しかったんですよ。
人前でも構わずに話しかけてくれることが、すごく嬉しかったんです。
私、ずっと透明人間だったから。無視されるのが、仕事だったから。
普通の店でお話しながら食事したり、一緒にショッピングしたり、そんな些細なことが、私にとっては夢みたいでした。

場所も状況も選ばず、どんな時も一貫して私のことを
”いる”ものとして扱ってくれた人、あなたが初めてだったんですよ」

「あんなことでよけりゃ、いつでもやってやるよ」

そう俺が茶化すと、ミヤギはいじらしい笑顔を浮かべた。

「そうでしょうね。だから、好きなんです。あなたのこと」

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No.215 ☆慶チン☆
2013/05/10 22:59


いなくなる人のこと、好きになっても、仕方ないんですけどね。

そう言って、彼女はさみしそうに笑った。

俺はしばらく口がきけなかったな。

ほとんど処理落ちしたみたいになっちまって。

気を抜いたらぼろぼろ泣いちまいそうだったな。

おいおい、このタイミングでそれは卑怯だろ、って。


この時、無意味で短い俺の余生に、ようやくひとつの目標ができる。


ミヤギの一言は、俺の中にすさまじい変革をもたらしたんだ。

俺は、どうにかして、ミヤギの借金を全部返してやりたいと思った。

一生が百円に満たないこの俺が、だ。

身の程知らずにもほどがあるよな。


生活は一気に変わった。俺は自分に言い聞かせた。

考えろ、考えろ、考えろ。

どうすれば残り数ヶ月で彼女の借金を返せる?

どうすれば彼女が安全に暮らしていけるようになる?

こういうときに宝くじを買ったり賭け事をしてもうまくいかないってことは分かっていた。

いつだって、賭け事は金があまってるやつが勝つし、宝くじは変化を望んでないやつが当たるんだよ。

俺はかつてのミヤギのアドバイスに従い、ひたすら街を歩きながら考えたんだ。

次の日も、その次の日も、その次の日も。

どこかに、自分にぴったりな答えが転がってると期待して。

その間、口にはほとんど物を入れなかったな。

空腹がある一定のラインを越えると、頭が冴え渡ることが分かったからだ。ミヤギはそんな俺のことを心配してか

「ねえ、自販機めぐりに戻りましょうよ」と何度も言った。

「私も自販機見るの好きになっちゃったんです。
あなたの背中にしがみついてるのも、好きだし」

それでも俺は歩き続け、考え続けた。


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